可愛いヤツ
ドーナツ屋を後にし、俺と姫川はドーナツ屋の近くにある本屋へと入る。
姫川は新刊の棚をキラキラした目で眺めている。
「欲しい本でもあったか?」
「うん、好きな作家さんの本が出てて…」
「待ってるから買ってこいよ」
「うん! ちょっと待ってて」
姫川は一冊の本を手にレジへ向かう。
(嬉しそうな顔してんな〜、可愛い)
そんな事を思っているのは姫川には内緒だ。
姫川が戻ってくるまで近くにあった本を手に取りパラパラとページをめくる。
「お待たせ。何読んでるの?」
「ここにあった新刊。俺滅多に本読まないからさ…」
「なら今度、僕のおすすめの本読んでみてよ」
「どういうの読んでんの?」
「推理とか恋愛とか色々」
そんな会話をしながら本屋を後にして俺の家へと向かった。
家に着いて、部屋で今日出されたレポートの作成に取り掛かった俺と綾。
最初は真面目に取り組んでいた俺は近くに綾がいるのもあって「触れたい。キスしたい」という欲望が募っていく。
でも、真剣にレポート作成をしている綾の邪魔にはなりたくないという思いもある。
1人で欲望と葛藤しながらもレポートを進めていると綾に声をかけられた。
「史葵くん、ここの文章なんだけどさ。ちょっと変じゃない?」
「あ〜、前文と似た感じになってっからこの文の前に………」
お互いのレポートを見合って変な表現や文章がないかの確認をしていると既にトケイハ夕方の6時を回っていた。
「もうこんな時間…」
「家まで送るぞ」
「ありがとう、史葵くん」