とある悪女の物語。
サヤカside*
サヤカside*
「……はぁ」
小さくため息を吐く茉莉を見つめる。
何でこの子が…と思ってしまうのは仕方がないだろう。
だって茉莉はこの学校一の美女だ。
大きな瞳に長い睫。プルプルの唇に淡く色づいた頬。その瞳の色は黒より薄いグレーで、髪の色も地毛が淡い茶色。体も華奢なのに出ているところは出ていて、抜群のスタイルを持っている。
そんなどう見てもフランス人形にしか見えない茉莉は最近よく愁いを帯びた表情をしている。
その理由は_______茉莉の視線の先にあるものが説明してくれている。
ボロボロになった上靴を抱きしめて泣いている如月一花と、そんな如月一花の傍にただ立っている黒崎光。
「……はぁ」
分かりやすくため息を吐く茉莉にどれだけの男の視線が集まっていることか。
短めのスカートから覗く足は本当に細くて白くて、胸もあるんだから非の打ち所がない。女の私でも見惚れてしまう。
性格も我儘なんて言わないし周りの機嫌を伺いがちで気も使えると来た。
そんな子より、あの子のどこに黒崎は魅力を感じたのだろうか。
茉莉の魅力は顔だけなんてことは絶対ない。
「……どうして」
寝不足なのか虚ろな目で、思ったことを口に出している茉莉。
でもあの子に納得できなくてもユリたちみたいに感情に走ったりしない。