とある悪女の物語。
私はすぅ、と息を吐いて口を開いた。
「茉莉のご両親、茉莉と血が繋がっていないんです。茉莉の実の母親は元々シングルマザーで、茉莉が幼い頃に再婚したものの直ぐに亡くなって」
「その後義父が再婚して今の家族になっているんですが…新しい茉莉の義母には子供が出来なくて。段々ギスギスとしてきた茉莉の家庭はあっという間に崩壊して、義父は家に帰らず義母は育児放棄」
「義母は茉莉と顔を合わせる度に自分に子供が出来ないことを茉莉に八つ当たりして、ついには月にきちんとお金は払うからとマンションを借りて茉莉をそこに放り出してしまったんです」
「だから到底茉莉の親からの協力は得られそうにないし、入院したことを連絡したところで入院費が振り込まれればまだマシという状況です」
だから茉莉は愛情を知らない。
……私がどうにか数週間だけでも茉莉の家にお邪魔して面倒を見れば何とかなるだろうけれど、少しそれは難しい。
でも私以外に茉莉にはまともな友人がいない。ユリに頼むだなんてことは絶対にあり得ないし、ユリの取り巻き達もそれは同じだ。
ならどうすればいいのか。