雨の繁華街
「あーあ、雨止んじゃうのかな。折角傘貰ったのに残念。」

恨めしそうに空を仰ぎ、彼女は呟く。その手にはしっかりと傘の柄を力強く握り離そうとはしていない。そんな光景を前にして思わず口を開く。

「…そんなオンボロ、後生大事にしなくても…」

きょとんと一呼吸。彼女は目を丸くしてそして目を伏せ、ふふふと静かに笑う。荒れていない薄紅色をした唇がそれを嬉しそうに紡ぎ出す。雨のせいで、傘のせいでそれがよく見えていなかったのだけれども。

「だって、初めてだったから。男の人からのプレゼント。」
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