雨の繁華街

雨が燦々と細く、霧のように降り続く。
弦、湿気なきゃいいなぁ、そんな事を考えながら人混みを避け急ぎ足で街を抜ける。
こんな天候でも、人の波は途絶えることはないらしい。色とりどりの傘の花があちらこちらと咲き誇り、少しばかりの鬱陶しさを感じる。ただ俺の心が狭いだけか。
一瞬、ポケットにあるスマホが振動したような気がした。
もしかして、集合時間より大幅に遅れていることに対しての苦情かパシリの連絡だろう。
歩みを止め、スマホを軽く操作する。

そんな中、ふと視線を正面から外すと裏路地にあたる古ぼけたマンションの入り口の階段に傘も差さないで膝を抱え座り込んでいる人が見える。
美しい白金の髪に、か細い体。
大きな瞳には今にも溢れ出しそうな涙。
目が離せなかった。
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