雨の繁華街

呂律は回っていないし、第一彼女からはアルコールの匂いはしないのだけれど、どうにも話す内容が些か理解に苦しむ。

「とにかく、傘も差さないで風邪ひくよ。ずぶ濡れじゃん。これ使っていいから」
見るに見かねて、使っていた傘を無理やり彼女に押し付けて持たす。

「え、おにぃさん濡れるじゃん」

「俺は男だから、多少は平気。ずぶ濡れの女の人を放置の方が出来ないよ。」

そう告げると、感慨深く傘を見つめる彼女。
…そんなに見ないでほしいな、それ店の忘れ物でボロボロすぎて実は捨てられてたの勝手に拾ってきたやつだから。
なんて、そんな不恰好なことなど言えるはずもなく、だけど羞恥を隠し通しせるほど器用でもない。だからこそ次に言葉を繋ぐ。

「じゃあ、早く帰りなよ。ここほんと物騒だから」
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