雨の繁華街
それに俺が何時までもいたら、彼女だって気まずいだろうし、動きたくても動けず仕舞いだろう。それに俺だってそろそろ行かねばならない。
彼女に背を向け楽器を抱え直して歩き出す。降り続く雨がますます冷たい、そう肌で感じながら。
「ちょ…っ。い…っ、行かないで…!」
必死に叫ぶような、そんな声が耳を貫く。慌てて振り返ると、悲壮感と切なげに揺れる瞳と儚げな笑みを傘で隠そうする彼女の姿があった。
「ど、どうしたの?」
弾けたように俺の表情を伺い、そして俯きぽつりと言葉が溢れ出す。それはどこか不安気にいて、そして強い決意の篭ったように感じた。
「…おにぃさん、巻き込むけど、連れ出して」
伸ばされた手。掴んで、と小さく懇願する声。