ビターチョコに願いを込めて
彼女の存在に気付いた彼は小さく声を漏らした。

墓穴を掘るって、きっとこういうこと。

私が彼の視線を他に向けられていたら……ううん、私が彼女から目を背けられていたら、こんなに胸が痛むこともなかった。



「……」

「……」



お互い駅へと足を進める彼女達を見つめることしかできなくて。



お願い、何か言って。

小テスト嫌だね、って、さっきみたいに。

そしたら私、今度はちゃんと返すから。



ねぇ、壱。

そんな顔で、あの子を見ないで。



「……あ!」



彼の声に、いつの間にか俯いていた顔を上げると、薄笑いを浮かべて彼女達に近付く、いかにも遊んでそうな男達の姿が見て取れた。

狙いは間違いなく彼女達だろう。



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