ビターチョコに願いを込めて
「おい、大丈夫か──」

「大丈夫じゃないのはあの子でしょ」



震える声で、必死に声を絞り出す。



「行きなよ、壱」



勇気が出ないなら背中を押してあげる。

それが、あんたを好きな私にできる唯一のことだと思うから。



「結梨……?」

「そんな顔で隣にいられても迷惑だし」

「何言って……」

「気になるんでしょ、あの子のこと」



私の言葉に彼が戸惑っていることは、背中を向けていても感じ取れる。

踏み出さないならもう一度、ううん、何度でも言うよ。



「行きな」



震える声で、でも力強く。

本当は行ってほしくなんかないよ。

ずっと傍にいてほしい。



でも、もう──



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