ビターチョコに願いを込めて
コンビニの前のゴミ箱に包み紙を捨てて、駅に向かって歩き始める。

慣れた手つきで改札を抜け、後ろ髪を引かれつつも笑顔を作った。



「さっき言ってた写真、後で送ってね」

「おー。お前も、この前の動画忘れんなよ」

「了解」



いつも通りに手を振って、私達は別々の階段を降りていく。

さっきまでは満たされていた筈の心も、今は寂しい。



「……27回」



私を苦しめる、彼が“彼女”を探した回数。

私が気付いてないとでも、思ってるの?





彼──壱とは、2年生になってから初めて同じクラスになった。

始めは挨拶を交わす程度だったけど、席替えで前後になって意気投合してからは、同じ時間を過ごすことが多くなった。

彼が私の中で特別な存在になっていることに気付いたのはいつだったか。



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