ビターチョコに願いを込めて
これだけのチョコを盗んだら十分復讐になるけど、自分じゃ食べられないから私に、ってことか。

ってそれ、私も共犯じゃん。



「こんなに食べれないよ、私。壱も食べなよ」

「だから俺食えねえって」

「意外といけるかもよ?1つだけ食べてみなよ」



押し付けた手前強くは断れないのか、彼は渋々チョコを取り出し、口に放り込んだ。



「……甘」



途端に顔を顰めた彼に、周りにいたクラスメートも笑う。



「ほんと壱って甘いの食べられないよなぁ」

「コーヒーとかもいつもブラックだっけ」

「え、じゃあケーキとかも無理?」

「モンブランはギリいける。ショートケーキは受け付けねえ」

「人生損してるなぁ」



教室のど真ん中で、彼を中心に笑顔の輪が広がる。



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