幼馴染の定義【完】
少し低めのテノールボイスに笑顔で振り向く。
案の定、そこには明るい茶髪を揺らす斗真〈トウマ〉が居た。
「……斗真。今帰り?」
いつからだろう。
斗真との距離が開いたのは。
いつからだろう。
斗真があたしの事を「メグ」と呼ばなくなったのは。
引き金はどっちだったんだろう。
どうして、こんなにも後悔が絶えないんだろう?
毎日のように遠目に見ているその顔は、見る度に洗練されているような気がする。
ただ、それは、あたしが斗真を好きと言うフィルターが掛かっているからってだけかもしれない。
綺麗につり上がった脱色している眉に、切れ長で奥二重の瞳。すっきりと筋の通る鼻筋。薄くて、いつだって軽薄そうに上がる唇。
ジャラジャラと両耳に揺れるピアスは、聞けば合計13個らしい。
斗真を真似て、あたしの耳にも両耳で5つのピアスが光る。