幼馴染の定義【完】


知りたい。知りたくない。離れたい。離れたくない。名前を呼んで欲しい。でも呼んで欲しくない。

矛盾がぶつかり合って、もう自分の心の中な筈なのにわからない。


結局あたしは、斗真とどうなりたいんだろう。



「……庄田は、」


「……ん?」


ボソリと落とされた言葉。

はじめちゃんは相変わらず無表情だけど、あたしを見据える瞳にはどこか優しさが溢れている。

心地の良い声はこの喫茶店と良く合っている。


「笑うと笑窪が出来る」


「……笑窪?」


「笑うと両頬に笑窪が出来る」


「……え、あー、そうだっけ……?」



笑窪なんてあったっけ。

……あれ、いつから自分の笑った顔、――見てないんだろう。



「あぁ、それに惚れた」


「……ほ、惚れ!?」

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