莉佳の不思議な冒険

大浦先生が去って行ったあと、私と石川先生が質問コーナーのベンチに取り残された。
「自分のことを認めないと、人のことを認めることはできないよ。」

先生がぽつんと言った。

私は泣きたくなった。
私みたいじゃなくて、いつもきらきら輝いているみんなのことを、私はこんなにすごいと思っているのに。

「それと、女は顔が命って言うからね。変顔写真、大胆だったね。」

そう、先生はにやにやしながら言った。

私は嫌な予感が的中したと思った。石川先生は陸上部の顧問だ。

私の変顔写真をみんなで回していたんだ。
そう思うと、腹の底がカッと熱くなった。
大体、女は顔が命だって?

教職にある者が、そんなこと言っていいと思ってるのか?

それも女子生徒に。

本当にそう思っているなら、今から全力で教員免許返してこい!!


尚も先生は続ける。

「それと、この間の三者面談のことだけど、親御さんと上手く行ってないの?
親御さんと話す時だけ口調が冷たかったけど。」

触れられたくないところに触れられて、私はついにはじけてしまった。

「あなたに言われたくありません。」

目が熱い。とんでもないことを言っている私を、私はまるで夢でも見ているようなら、遠くから見ているような心地がした。

あの、優等生で通っていた私がテストの成績のことを言われ、あまつさえ先生に歯向かっている!

空気がわんわん鳴っていた。

もう一つのテーブルのベンチに座っている二年生と思われる女子生徒がこちらを興味深げに見つめてくる。

やってしまったと思った時にはもう遅かった。
私は思わず目を伏せた。

「ふーん、『あなたには言われたくない
』ね。ま、僕は別にいいけど。」

周りの視線が痛かった。
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