莉佳の不思議な冒険
逃亡
泣きっ面に蜂
あの後、どうやって帰ってきたか覚えていない。
5限と6限を受けたが、ぼーっとしていて頭に入らなかった。
滑り止めと言って、赤と黒のコンクリートで縞模様になった坂を登りきって家の前に着いた時には、わたしの息は上がっていた。
もうあたりは薄暗くなりつつある。
と、私は家の前に、スーツ姿の男性が立っているのを見つけた。
訪問販売か何かだろうか。
そういえば、と、私はテレビで見たことを思い出した。
泥棒にはスーツ姿が一番多いらしい。
ただし、靴がスニーカーらしい。
私は身構えて、彼の姿を観察した。
とりあえず、どこも変なところはないようだ。
私が見ていると、向こうの方が気づいたようで、私に声を掛けた。
「こんにちは、この家の方ですか?」
「はい、そうですが。」
後ろに停まっている黒いレガシーから、警官が出てきた。
「私は防衛省のものですが、ちょっとお時間よろしいですか?」