莉佳の不思議な冒険
3時限目が終わると、私はグループのところに駆けていく。
「見て!見て!私ね、ストパーかけたんだよ!」
ハイテンションで可愛らしい感じで話しかける。いわゆるキャラってやつだ。
私のキャラは不思議ちゃんで天然だった。
「きゃー、まじ?」
「すごーい。」
みんなもハイテンションで返してくる。
私達のグループは、クラスからちょっと外れていて、それで地味だと思われないように、はしゃぎまくる傾向があった。
異常なくらいテンションが高い。
中には先生に「ギャル」と評される子もいる。
「でねでねー!、私旅行に行ってきたの!これおみやげー!」
そう言って私は色鉛筆を一本ずつと、ポスターカードを一枚ずつ配った。
「どこいってきたの?」
私は笑って言った。
「秘密。」
えりちゃんがつまらなさそうに言った。
「べつどうでもよくね?」
「それよりさ〜、、、、」
話題は別のことに移っていく。
私も相槌を打ちながら聞く。
話がひと段落した所で、私は切り出した。
「私ちょっと御手洗行ってくるね。」
そのまま、廊下ではしゃいでいる生徒達のあいだを縫ってうつむき加減に歩く。
トイレに着くと、鏡の前でリップを塗ったり雑談したり髪を整えたりしている子達の後ろを通って個室に入った。
限界だった。キャラを被ってあんなふうに喋るのも、今の状況も。
声を出さずに号泣した。なぜだか分からないけれど、感情が高まって、涙が止まらなかった。
ひとしきり泣き終わると、涙を拭って個室を出た。
個室を出ると、さっきの子達に混じってかなちゃんがいた。
「おお。」と私が言うと、
「おお。」と返した。
かなちゃんはさっきのグループのメンバーの一人だ。ストイックで気が強く、バイオリンがとても上手いが、どこか変わっている。
手を洗うと、案の定水が冷たかった。
鏡を見つめて、私はため息をついた。
家で見た時とは顔つきが全く違う。
おどおどと不安げな表情。
私も決して太っている訳ではないが、隣の子達のほうがもっと細いせいで、微妙に見える。
何よりみんなは自信ありげに輝いている。
思考を切り替えると、私はかなちゃんに話しかけた。
「私って、まりちゃんに話しかける時気後れしちゃうんだよね。」
そう言うと、かなちゃんは微妙な反応をした。
「うーん。」
そう言ってトイレを後にした。
私もついていき、2人で教室へと戻っていった。