冷たい舌
 

 
 認めないんだから―

 だれ?

 夢の中で、誰かが叫んでいた。
 あの赤黒く変わり果てた淵の傍で。

 わたし、ずっと決めてたんだから、あの人と結婚するって。

 初恋なの。初めての人なの。
 あの人だけが好きなの。

 なのに、どうして?

 絶対に、私はあの人と結ばれるはずなのに。

 透子は、ぼんやりと思う。

 そうかな。そうでもないよ。

 私も和尚以外の人を好きになったりしないけど、私は和尚とは結ばれない。

 永遠に―

 好きな人と一時でも、想いを交わしあえた貴女は幸せだよ?

< 245 / 396 >

この作品をシェア

pagetop