冷たい舌
 


 
「……和尚っ」

 透子と公人の側に立つ和尚を見て、低く呻いた忠尚の横で、龍也は聞こえよがしに溜息を漏らす。

「お前も、ほんっと諦め悪いな」

 小声で囁いてみたが、忠尚はいつものように冗談では返してはこなかった。

 龍也は不安げに、祭壇を睨みつける忠尚を見遣る。



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