冷たい舌
 会話が弾んだとは言い難いが、ようやく口がきけたことが素直に嬉しかった。

 この時点では、透子は、公人の意図をわかってはいなかった。

 此処でこうして、和尚を迎えることは、正式に透子との結婚を認めたのと同じことだということを。

 透子はそのことにも気づかず、ご機嫌だった。

「……鼻唄歌うな。
 神事の最中だぞ」

 和尚は溜息交じりに透子の手を軽くはたいた。




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