冷たい舌
「交通安全の御守りですね。
えーと、幾らだっけ、龍也」
「六百円だ。
いい加減、覚えろ透子。
っつーか、邪魔だ、どけっ」
透子を押し退けると、龍也は明らかに透子目当ての男の客に、無愛想にそれを手渡した。
社務所の前も祭りの人数に合わせてけっこうな人だかりだった。
珍しく髪を括り、紅白の飾りをつけている透子は、後ろを向いて、お札を数えながら、ぶつぶつ言っている。
「だいたいさーあ、うちの龍神様に交通安全とか、安産とか祈願して効果あるわけ?」
「お前が言うなよ。
でも、ま、少なくとも、恋愛成就は嘘だろうな。こんないきおくれの娘がいるようじゃ」
「私はまだ、二十四ですっ」
お札を置いて立ち上がったついでに、龍也の背を蹴る。
「てっ。もうっ! さっさとどこへでも片付いちゃってくださいよ、おねえさまっ」
「あんた、この間と言うこと違うじゃないっ」
つい、そこが社務所であることを忘れて、首を絞めそうになったとき、
「すみません。
恋愛成就の御守りひとつ―」