冷たい舌
 わかっています、と小さく加奈子は言った。

 龍也はなんとなく察したように、二人を見比べる。

「お前が何を考えているのか知らないが、透子にちょっかいかけるのは、お門違いだ」

 和尚は息を深く吸い込むと、透子の顔を見ずに言った。

「透子はもう― 俺と結婚するんだから」

 透子は心の中で叫んだ。

 この馬鹿ーっ。
 こんなところで言うなー!

 辺りは手伝いに来ている氏子さんたちでいっぱいだった。

 案の定、ちらちらと視線がこちらを向く。

「透子さんが忠尚さんをどう思ってるかなんて関係ないです」

「お前らの勝手な争いに透子を巻き込むなと言ってるんだ」

 女相手だと言うのに、和尚の口調も態度も容赦なかった。

 和尚は知っているのだろう。

 加奈子が何をしているのか。
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