冷たい舌
 そして、ふん、と諦めたように鼻を鳴らす。

「まあな、お前なんでも適当だもんな。

 結婚も適当にしとけばいいんじゃないの」

「なんでも適当っていうより、怖いもの知らずなんだよ、こいつ」

 さっき加奈子に忠告しかけたことに気づいている和尚は、わざと軽い口調で諭す。

 だが、透子は柱に貼られた龍神の御札を見たまま黙っていた。

「透子……?」

「私にだって、怖いものはあるわ」

 それだけ言うと、透子は席を立った。




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