冷たい舌
「俺はお前が何かはわからない。
 だけど、お前は俺に幸福を与えてくれるものだと思う」

 和尚は女を直視して言い切った。
 なるほど、と女は頷く。

「お前はなかなか頭がいい」

 感心しているのか、小莫迦にしているのか、いまいち、わからない口調だった。

「人であるお前が、私を自分の願いを叶えるものだと言った。
 だから、私はそれに従わなければならない」

「え?」

 女は腕を組んで、嫣然と笑う。

「私が本当はなんなのか、私は知らないが、人は私を『神』と呼ぶ。

 神とは人によって呪われているもの。
 祈りにより、縛られている力そのものだ。

 お前が私を願いを叶える神だと思い、祈るのならそうなるし、祟る神だと思えば、厭だが、祟ってやろう」

 祟ってやろうと言われても、と思って、はっとする。
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