冷たい舌
 人の許可?

「和尚、和尚―」

 誰か― あまり心地よくない声が自分を呼んでいる。

 目を覚ますと、公人が自分を見下ろしていた。
「……なにやっとんじゃ、お前ら」

 家に居ないと思ったら、と呆れたように、和尚の膝の上で眠る透子を見下ろす。

 気持ちよさそうに寝ている孫娘の顔を覗き込んで言った。

「おうおう、よう寝とるのう。やっぱり、お前の側じゃと、よう眠れるようじゃの。

 もっと早う結婚させてやればよかったの」

「透子が、うん、て言わねえだろ?」

「でも、よかったじゃろうが。うまい具合に結婚に持ち込めて。

 お前も人を嵌めるのがうまいのう」

「別に嵌めたわけじゃない。物の弾みだ。弾み」
と、らしくもなく赤くなる。

「透子には、まだ罪の意識があるから、お前を拒絶するのかしらんが。

 そのうち、気もおさまろう。そうすれば、お前を受け入れるはずじゃ」

 和尚は透子を見下ろし呟く。

「……そうかな?」
< 315 / 396 >

この作品をシェア

pagetop