冷たい舌
 わからない わからない
 そのとき、聞き慣れた声がした。

『透子』

 はい?
 透子は、もう一度、顔を上げた。

『透子 透子』
 自分を繰り返し呼ぶ、その声は―

 透子は、紅く染まった袴のまま、異様な色の空を見上げ、呟いた。

「お祖母ちゃん……?」


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