冷たい舌
「斉上(さいしょう)さん!」

「先輩、どうしたんですか?」

 ちょっと繊細すぎる造りで、好き嫌いのある和尚たちの顔とは違う、極普通の整った顔をした斉上は、上背もあって、極普通にモテる。

「龍造寺に行ったら、みんなこっちだって言うから」

 斉上は軽そうな外見に反して、面倒見がよく、大学は別々になっていたが、付き合いは続いていた。

 透子を見て、嬉しそうに目を細める。

「やあやあ、透子ちゃん。

 暫く会わない間に、一段と奇麗になったね」

「……この間、本屋さんでお会いませんでしたっけ?」

 相変わらずの軽口に睨んで見せると、ははは、と斉上は誤魔化すように笑いながら、

「ときに和尚。
 お前、今夜、暇か?」
と言う。

 急に振られた和尚は訝しげに彼を見た。

 彼の誘いはロクなものではないので、和尚が受けるずもなく、誘われるのはいつも忠尚ひとりだったからだ。

「コンパ、一人足りないんだよ。
 お前、来てくれないか?」

 熊手を持つ腕を捕まれ、和尚は先輩だというのに、邪険に振り払う。
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