冷たい舌
「いっ、いいじゃないか。透子ちゃん。

 ちょっとくらい、和尚貸してくれても」

「貸すの貸さないのって、和尚、別に私のじゃないですから」

 そう言うと、斉上は、あれっという顔をして、和尚を見た。

「なんだ、お前ら付き合ってるんじゃなかったのか?」

 えっ!? と三人は同時に斉上を振り向く。

 斉上は額に手をやりながら、

「あっ、なんだそうかあ。

 てっきりそうだと思ってたよ。

 だって、高校のとき、和尚の奴―」

「斉上さんっ!」

 何故かいきなり、和尚が割って入った。

 そんな和尚を見て斉上は、にやりと笑い、その肩に腕をのせた。

「和尚。
 付き合ってくれるよな? 今夜」

 詰まった和尚だったが、斉上の視線に押されたように頷いた。

 斉上は、よし、と笑うと、透子に向き直り、おもむろにその手を取って言った。

「じゃ。和尚、ちょっと借りるけど、すぐ返すから心配しないで。

 でも、こいつがこれで、ふらふら~っとどっか行っちゃったら、俺が居るからね」

 なんじゃ、そりゃ、と引きつった笑いを返す。
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