フキゲン課長の溺愛事情
「避けてたというか……彼女の部屋に泊まってた。でも、バレないように、荷物だけ朝早くに部屋に入れに帰ってたんだ……」
「ふざけないでよ、バレないようにって、なによそれ……」

 怒っていたつもりだったのに、突然熱いものが込み上げてきて、璃子の視界をにじませた。

「璃子は……きっとこんなふうに怒ると思って……言い出せなかった」
「あたり前よ。普通怒るでしょっ」

 璃子は目から熱いものがこぼれそうになり、あわてて指先で拭った。

「璃子が……きっと彼女に腹を立てて……彼女になにかするんじゃないかと思うと……なかなか本当のことを言えなかったんだ」
「なにかってなによ。私がなにをするって言うのよ」
「璃子は……ちょっと性格のきついところがあるだろ。だから、彼女に嫌がらせとかするんじゃないかと……」
「はぁ? 私のことをそんな意地の悪い女だと思ってたわけ?」
「いや、そうじゃないけど……彼女が……『璃子さんってちょっと怖い』って言うんだ。『啓一さんみたいにやさしい人を思い通りに振り回すような人だから、きっと私たちのことを許してくれない』って……」
「その彼女って年下なの!?」
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