フキゲン課長の溺愛事情
「なんだ、つまらん」
「つまらん……って、課長はいったい私をなんだと思ってるんですか」
「おもしろい同居人」
「なんかそれムカツク」

 達樹に聞こえないよう、口の中でもごもごとつぶやいた。

「文句を言ってないで、そろそろ起きろ」
「わかりましたっ」

 達樹が背を向けて歩き出したので、璃子はパジャマのままソファベッドから下りた。

 以前は、啓一のために朝食を作らなくちゃ、という義務感から毎朝ベッドから這い出していた。その義務を失った今、こうして起こしてもらえるのはありがたいことだけど……。

(毎朝こんなことをしてもらうわけにもいかないよね。そろそろ本気で目覚まし時計を買わなくちゃ……)

 反省しながら、いつものごとく着替えて顔を洗ってメイクをして、ダイニングに行った。テーブルに並んだ朝食を見て、ほーっと息を吐く。

「どうした?」
「朝目覚めたら、こうしてご飯の用意ができてるなんて幸せすぎますっ。クロワッサンにオムレツにサラダなんて、まるでホテルの朝食みたい!」
「朝はしっかり食べないと仕事にならないからな」
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