フキゲン課長の溺愛事情

「まあ、そうですね。でも、私のために誰かが作ってくれるなんてうれしい」

　璃子の言葉を聞いて、達樹が頬を緩めた。

「そんなふうに言われたら、明日も腕を振るわないわけにはいかないな」
「あー、すみません。今日、目覚ましを買ってきますので、明日から自分で作ります」
「どれだけ朝が弱いんだ」
「学生の時は目覚まし三個で起きてました」
「目覚ましなんか買わなくても、俺が起こしてやる。それに昨日のショウガ焼きは今まで食べた中で一番うまかった。この際、水上が夕食担当、俺が朝食担当、というのでどうだ？」

　それは魅力的な提案だ。璃子は一も二もなく飛びつく。

「交渉成立、よろしくお願いしますっ」
「よし、水上は毎朝好きなだけ寝てろ」

（やーん、それって幸せすぎるぅ……）

　璃子は気持ちいい毛布の肌触りを思い出して、うっとりと目もとを緩めた。そんな彼女を見て、達樹がいたずらっぽく言う。

「なんたって俺は目覚ましよりも効果的な起こし方を知ってるんだからな」