フキゲン課長の溺愛事情
「うわー、なにこのプロセス図」

 細かい英語が書かれた装置を見ても、ちんぷんかんぷんだ。

「せめてこれを日本語で書いたものがあればなぁ……」

 ブツブツと言いながら、本文の日本語訳を始める。薄いパンフだったが、意外に内容は濃くて、英文とパソコンを交互に見ているうちに、だんだん頭が疲れて働かなくなってきた。

(あー、もう英語読んでも頭に入ってこなくなっちゃった。ちょっとひと休みしよ……)

 仕事をしなくちゃ、と思うが、睡魔に勝てず、璃子はパソコンとパンフをテーブルの向こうに押しやると、そのままテーブルに突っ伏した。



 それからどのくらい経ったのか、璃子は体がふわふわ揺れているような感覚で、ぼんやりと意識を取り戻した。

(あ、まずい。本気で寝ちゃった……)

 完全に覚醒しないままゆらゆら揺られていると心地良くて、また寝てしまいそうだ。うとうとしているうちに、どこかにそっと下ろされた。背中の下のわずかに弾力のある感触から、間借りしている部屋のソファベッドに寝かされたのだとわかる。体に温かな毛布が掛けられ、低く抑えた声が降ってきた。
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