フキゲン課長の溺愛事情
第九章 スウィンギング・ハート
「璃子、そろそろ起きろ」

 達樹の低い声が聞こえたかと思うと、耳にふぅっと息を吹きかけられた。

「うわあああっ」

 驚いてソファベッドから跳ね起きる璃子を見て、達樹がくすりと笑う。

「水上のそのおかしな顔、毎朝見ているのに、見飽きないなんて不思議だな」
「〝おかしな顔〟なんて失礼な! 〝耳フー〟はやめてくださいって何度言ったらわかるんですかっ」

 璃子は首筋を擦りながら言った。毎朝のことながら鳥肌が立つ。

「〝耳フー〟しなくても起きられるようになったらやめてやるよ」

 達樹に言われて、返す言葉が見つからず、璃子はぷっと頬を膨らませた。

「昨日、着替えずに寝てたからシャワーを浴びたいだろうと思って、早めに起こしてやったんだ」
「あ」

 そう言われて、昨晩のことをぼんやりと思い出した。仕事の途中で寝てしまった気がする。
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