フキゲン課長の溺愛事情
「そうでしたね、一応そうでしたね」

 あまりにのびのびと達樹の部屋で暮らしていたので、彼が上司で男性だということを忘れかけていた。

 璃子が納得した、というようにポンと手を打ったのを見て、達樹が苦笑をこぼした。

「そこは納得するところか?」
「あまりにフツーに生活してたんで、意識してませんでした!」
「それは聞き捨てならないな」

 達樹が一歩璃子に近づいた。璃子よりも二十センチほど背が高く肩幅の広い男性が、腰をかがめて片手を伸ばし、璃子のサイドの髪を梳くようにして頬に触れた。

 頬に骨張った大きな手を感じて、璃子の頬が熱を帯びる。

(な、なんか、調子狂う)

「わ、私、シャワー浴びるんで通してください」
「一緒に浴びようか」

 目を細め、色気のある表情で言われて、璃子の心拍数が跳ね上がった。

「な、なに言ってるんですかっ!」
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