フキゲン課長の溺愛事情
 璃子が耳まで真っ赤に染めたのを見て、達樹が声を上げて笑い出した。

「水上は本当におもしろいやつだな」
「からかったんですか?」
「どう思う?」

 達樹がニヤッと笑った。

(絶対にからかわれたんだ!)

 彼の言葉を真に受けてしまったことが恥ずかしい。璃子は達樹を押しのけようと、彼の胸を両手で押そうとした。けれど、ワイシャツ越しに触れた彼の胸板は思ったよりも厚くて、びくともしない。

「力で俺に勝てるとでも?」

 璃子の両手首を達樹の手が掴んだ。そのまま彼に手首を握られ、璃子はゆっくりとソファベッドに押し倒された。達樹が膝をのせてソファベッドが大きく沈む。

「課長!?」

 手首を押さえつけられたまま、璃子は達樹を見上げた。彼は眉を寄せた険しい表情をしている。怒っているようで、でもどこか苦しそうにも見える。

「あの……っ」

 璃子の手首を握る彼の手は、鋼のように力強い。鼓動が乱れるのは、安心して一緒に住んでいた相手に、普段と違う姿を見せられたから……?
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