フキゲン課長の溺愛事情
 予想もしていなかった部長の言葉に、璃子はぱちくりと瞬きをした。

「年に二回の面談で、水上さんの仕事に対する情熱や意欲を感じていたし、キミになら任せられると思うんだ。どうだろうか」

 部長に言われて、璃子はゴクンと唾を飲み込んだ。一生懸命仕事をしてきたのは出世のためではなかったが、これまでの仕事ぶりが評価されたのだとしたら、とてもうれしいことだ。

「あ、ありがとうございます!」

 喜びと緊張でカチコチになる璃子を見て、部長は一度うなずいた。

「よかった。辞令は五月一日付けで改めて出されるから。広報室のメンバーには話してもかまわないが、辞令が出るまではあまり触れ回らないように」
「わかりました。今後もこれまで以上に業務に励んで参ります」

 璃子は深々と頭を下げた。璃子が顔を上げたとき、部長が一度咳払いをした。

「それから」
「はい」
「プライベートでいろいろあったようだが……」

 部長の言葉に璃子はギクリとした。とうとうお叱りを受けるのか、と身構える。

「この一週間、水上さんの仕事ぶりを見ていたが、いつも通りの働きだった」
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