フキゲン課長の溺愛事情
「璃子……」

 沙織の言葉に胸がじぃんとしてきた。沙織がいたずらっぽく言う。

「それに考えてみてよ。私と沙織を除けば青葉くんしかいないのよ? 〝青葉室長〟なんて冗談じゃないわ」

 沙織の言葉に優太が唇を尖らせる。

「冗談じゃないなんて、それはひどすぎませんか?」
「じゃあ、青葉くんが室長やる?」

 沙織に問われて優太が真顔になる。

「いいえ。俺は水上室長にならついて行きます!」
「それなら問題なし! 璃子、これからもよろしく!」
「こちらこそよろしくね。一生懸命がんばるからこれからもご協力をお願いします」

 璃子は深々と頭を下げた。顔を上げたら沙織が手を差し出していた。応援してくれる親友の手を握ると、胸に熱いものが込み上げてくる。

「結束が固くて何よりだな」

 突然男性の声が聞こえてきた。相手の顔を見るまでもなく、璃子にはその声の主が誰だかわかる。

「課長!」
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