フキゲン課長の溺愛事情
 璃子が振り返ったとき、達樹が歩み寄って紙の束で璃子の頭をぽんと叩いた。

「ほら、水上が言ってたプロセス図のコピーだ」

 璃子は受け取って内容を確認する。彼の言った通り、それはずっと欲しかった廃水再利用プロセス図の日本語版だった。

「すぐにコピーをとってお返ししますね」

 璃子の言葉に、達樹が柔らかな表情で応える。

「必要ない。コピーのコピーだから。不要になったら忘れずにシュレッダーにかけるように」
「わかりました。わざわざありがとうございます!」
「がんばれよ」

 達樹が言って片手をあげて広報室を出て行った。

(課長には助けられてばかりだな……)

 璃子はプロセス図を胸に抱いて、ほっと息を吐いた。達樹への感謝の気持ちがじわじわと込み上げてくる。

「藤岡課長が笑ってた……」

 璃子の横で優太がボソッとつぶやいた。同じく沙織も小声で言う。
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