フキゲン課長の溺愛事情
「水上は車が苦手なのか?」
「いいえ」

 璃子は横顔に達樹の視線を感じながら、フロントガラスの向こうをじっと見た。

「食べて休憩したつもりだったけど、食後すぐに車に乗ったから気分でも悪くなったのかな?」

 気遣うように言われて、璃子は首を振る。

「そんなんじゃないです。ちょっと考え事をしてるんです」
「話しかけない方がいいのか?」

 達樹に言われて、璃子は首を振った。車内の空気を和ませようと、膝の上のトートバッグからCDを取り出した。

「CDかけてもいいですか?」
「どうぞ。水上はどういう音楽を聴くんだ?」
「基本的には洋楽です。今はイギリス出身の男性バンドの曲が好きです」

 達樹がナビのパネルを操作してくれたので、璃子は現れた投入口からCDを入れた。すぐにノリのいい曲が流れ出す。

 達樹がふっと口もとを緩めた。

「水上らしい曲だな」
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