フキゲン課長の溺愛事情
 もう、しょうがないなー、などと思いながら、璃子は口もとを緩めた。

「璃子と山城くんって、同棲して三年くらいだっけ?」
「うん、そう。啓一はそういう記念日、あんまり気にしない方なんだけど、実は付き合って五年目と同棲を始めて三年目の記念日がもうすぐなんだ」

 璃子の返事を聞いて沙織がニーッと笑った。

「家で会えるのに、わざわざ改まって呼び出すなんて……」
「なに?」

 沙織の意味ありげな表情が理解できず、璃子は小首を傾げた。

「山城くん、実はプロポーズするつもりだったりして」
「えっ」

 沙織の言葉に、璃子の心臓がドキンと大きな音を立てた。

(プ、プロポーズ!? そ、そりゃ、もうすぐ記念日だし、私も九月の誕生日が来たら二十八歳になるし……)

 璃子の頬がみるみる熱くなっていく。いくら互いに空気のような存在になりつつあるとはいえ、プロポーズといえば人生の一大イベントだ。

(今日、こんな日に!?)

「ま、まさかぁ。歓迎会に出なきゃいけないことは啓一に言ってるし……わざわざ予定のある今日にそんな大切なことを……」
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