フキゲン課長の溺愛事情
悔しいので、歩いて行く、と言いたいところだが、田舎のおいしい空気を吸って散歩したので、思ったよりもお腹が空いていた。
「やっぱり食い意地の張った女でいいですっ。もう歩けませんっ」
「そういうところがツボなんだよ。わかってる?」
「わかりませんっ」
ふてくされる璃子を見て達樹がくすくす笑っている。そんなふたりを海翔が温かい目で見ていた。
その後、璃子は達樹とともに海翔のSUVの後部座席に並んで乗せてもらった。十分もしないうちに到着したのは、そば屋と見まごうほど趣のある黒い柱と白壁の一軒家だった。壁に掛けられた木の看板には“インド料理・リシャバ”と達筆で書かれている。店の駐車場で車から降りたとたん、独特のスパイシーな香りに鼻をくすぐられて、余計に空腹を感じてしまう。
「もうダメ、お腹と背中がくっつく~!」
海翔が笑いながら、黒い格子の引き戸を開けてふたりを通してくれた。達樹の顔を見て、白いエプロン姿の三十代半ばくらいの女性店員が大きな笑顔になった。
「藤岡さんじゃないですか! ストックホルムに赴任されたと聞きましたが、帰国されたんですか?」
「やっぱり食い意地の張った女でいいですっ。もう歩けませんっ」
「そういうところがツボなんだよ。わかってる?」
「わかりませんっ」
ふてくされる璃子を見て達樹がくすくす笑っている。そんなふたりを海翔が温かい目で見ていた。
その後、璃子は達樹とともに海翔のSUVの後部座席に並んで乗せてもらった。十分もしないうちに到着したのは、そば屋と見まごうほど趣のある黒い柱と白壁の一軒家だった。壁に掛けられた木の看板には“インド料理・リシャバ”と達筆で書かれている。店の駐車場で車から降りたとたん、独特のスパイシーな香りに鼻をくすぐられて、余計に空腹を感じてしまう。
「もうダメ、お腹と背中がくっつく~!」
海翔が笑いながら、黒い格子の引き戸を開けてふたりを通してくれた。達樹の顔を見て、白いエプロン姿の三十代半ばくらいの女性店員が大きな笑顔になった。
「藤岡さんじゃないですか! ストックホルムに赴任されたと聞きましたが、帰国されたんですか?」