フキゲン課長の溺愛事情
第十一章 課長の事情
昼食後は郷土資料館などを見学し、川沿いを散策した後、大阪市内に戻ることになった。璃子はエコハウスの視察――気持ちの上では達樹との奥美郷日帰り旅行――を満喫して、彼の車の助手席に座った。
「今日は本当にありがとうございました。仕事に対する意識も変わりましたし、なにより楽しかったです」
璃子は嬉々として語り始めた。達樹はアクセルを踏んで車を走らせながら、ときおり短く相づちを打ち、璃子の話を聞いている。
奥美郷町から離れるにつれて、西の稜線が茜色に染まり始めた。
「きれいだな」
達樹がハンドルを握ったまま、ぽつりと言った。璃子も運転席側の西の空を見る。達樹の横顔が逆光に染まって、なぜだか陰りを帯びて見えた。
(さっきから口数が少ないけど……課長はなにかを……誰かを思い出してるのかな……?)
今彼の頭の中を占めているのは誰だろう。気になって我慢できなくなり、璃子はついに疑問を言葉にした。
「石川さんって……どなたですか?」
「今日は本当にありがとうございました。仕事に対する意識も変わりましたし、なにより楽しかったです」
璃子は嬉々として語り始めた。達樹はアクセルを踏んで車を走らせながら、ときおり短く相づちを打ち、璃子の話を聞いている。
奥美郷町から離れるにつれて、西の稜線が茜色に染まり始めた。
「きれいだな」
達樹がハンドルを握ったまま、ぽつりと言った。璃子も運転席側の西の空を見る。達樹の横顔が逆光に染まって、なぜだか陰りを帯びて見えた。
(さっきから口数が少ないけど……課長はなにかを……誰かを思い出してるのかな……?)
今彼の頭の中を占めているのは誰だろう。気になって我慢できなくなり、璃子はついに疑問を言葉にした。
「石川さんって……どなたですか?」