フキゲン課長の溺愛事情
「美咲と仕事上の付き合いをしていくうちに、彼女の仕事に対する姿勢に惹かれていった。新卒の俺なんか相手にしてくれるわけないと思ってたが……彼女も俺を評価してくれるようになって……気づいたら付き合うことになっていた。そしてそのまま……付き合って二年目に同棲を始めた。そこは水上と一緒だな」
達樹がチラリと璃子に視線を向けた。璃子はうなずく。
「そのとき、彼女は係長に昇進した。小規模企業とはいえ二十七歳で係長なんて今から考えてもすごいよな。そのときは純粋に、『美咲なら当然だ』と思ってた。で、三年後、俺にストックホルム出向の話が持ち上がり……彼女にプロポーズした」
プロポーズした、という達樹の言葉に、璃子の胸がズキンと痛んだ。達樹にとって、美咲は一生一緒にいたいと思った女性だったのだから。
「『俺と一緒にストックホルムに来てほしい』って言ったら、美咲が初めて俺の目の前で泣いたんだ。『私にキャリアを捨てろって言うの!?』って……。だから、『それなら、三年、日本で待っててほしい』って言ったんだ。そうしたら『考えさせて』って言われた。それから何度も話し合ったけど、彼女は『キャリアも捨てられないし、三年もひとりで待てない』って言うんだ。俺もやりがいのある仕事のチャンスを蹴ることはできなくて……結局別れることになった」
「課長は……美咲さんの希望を叶えてあげなかったから……『俺は泣かせた方だ』って言ったんですか?」
達樹がチラリと璃子に視線を向けた。璃子はうなずく。
「そのとき、彼女は係長に昇進した。小規模企業とはいえ二十七歳で係長なんて今から考えてもすごいよな。そのときは純粋に、『美咲なら当然だ』と思ってた。で、三年後、俺にストックホルム出向の話が持ち上がり……彼女にプロポーズした」
プロポーズした、という達樹の言葉に、璃子の胸がズキンと痛んだ。達樹にとって、美咲は一生一緒にいたいと思った女性だったのだから。
「『俺と一緒にストックホルムに来てほしい』って言ったら、美咲が初めて俺の目の前で泣いたんだ。『私にキャリアを捨てろって言うの!?』って……。だから、『それなら、三年、日本で待っててほしい』って言ったんだ。そうしたら『考えさせて』って言われた。それから何度も話し合ったけど、彼女は『キャリアも捨てられないし、三年もひとりで待てない』って言うんだ。俺もやりがいのある仕事のチャンスを蹴ることはできなくて……結局別れることになった」
「課長は……美咲さんの希望を叶えてあげなかったから……『俺は泣かせた方だ』って言ったんですか?」