フキゲン課長の溺愛事情
とはいえ、せっかく楽しい時間を過ごしたのに、璃子が元カノの話を持ち出したせいで、しんみりしたムードのまま一日を終えるのは嫌だった。璃子は気分を盛り上げようと、達樹に途中で大型スーパーに寄ってくれるように頼んだ。
「いいけど、なにを買いたいんだ?」
「卓上串揚げ鍋です!」
「卓上フライヤーってやつか?」
「そうです! 今日は一緒に串揚げを作って食べましょうよ! 課長も食べて飲んで楽しい気分になって、今日を楽しく締めくくりましょ!」
達樹がマンションから程近い大型スーパーの駐車場に駐車してくれたので、璃子は助手席から降りた。達樹も苦笑しながら車を降りる。
「俺は別に落ち込んじゃいないけどな」
「そうですか?」
「ああ。今日は楽しかったから。あ、今日も、か」
「四おもしろい私がいるから?」
璃子がいたずらっぽく言うと、達樹が小さく笑った。
「そう。卓上串揚げ鍋を欲しがる時点で、一おもしろいプラスだ」
璃子は彼のその表情にホッとしながら、店内入口へと向かった。