フキゲン課長の溺愛事情
「んん……っ、達樹……」

 璃子の背中に彼の腕が回され、ギュッと引き寄せられた。何度も借りた胸だけど、今感じているのはそのとき覚えた安心感ではない。大きくて広い胸の中に閉じ込められ、激しくキスを返されて、頭も体も熱に浮かされたようになる。

「璃子」

 キスの合間に名前を呼ぶ彼の声もかすれている。

「達樹」

 どうして今まで求めなかったんだろう。

 それが不思議なくらい、璃子の心も体も彼を求めていた。達樹も同じ気持ちだということは、璃子を抱きしめる腕の力強さからもわかった。

「璃子……」

 達樹が唇を離し、両手で璃子の頬を包み込んだ。見つめ合った瞳は潤んでいる。ふたりとも頬が上気して、呼吸が荒い。

「俺の部屋でいいな」

 うなずいた直後、璃子の背中と膝裏に彼の手が回されて、ふわりと抱き上げられた。達樹が彼の部屋のドアを開けて、ダークブラウンのシーツのベッドに璃子を下ろす。
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