フキゲン課長の溺愛事情
思う存分惰眠を貪り、ようやく浅い眠りに引き上げられた頃、璃子は達樹に髪をくしゃくしゃと掻き回された。
「もう、なにぃ……?」
気だるげに彼の手を押しのける。
「今日はこのまま璃子と一緒に過ごしたいが、これから友人の結婚式に出なきゃならない。気乗りしないが、行くと言った手前、行かないとな。璃子、俺がいなくてもちゃんと起きて朝飯食えよ」
達樹の声がして、耳たぶにチュッと口づけられた。くすぐったくて首をすくめながら、璃子は毛布に潜り込んだ。
玄関ドアが開いて閉じる音がした。部屋の中は静かだ。達樹が開けていったダークブラウンの遮光カーテンの間から、明るい日差しが差し込んでいる。それがどうにも眩しくて、璃子は重たいまぶたを持ち上げた。何度も瞬きをして頭を起こそうとする。
「今何時……?」
首を動かして、壁の掛け時計を見た。もう十一時前だ。
「達樹?」