フキゲン課長の溺愛事情
 ベッドの上に起き上がって、乱れた髪を掻き上げる。全身が気だるくて、璃子は長く息を吐いた。

「あ、そっか。結婚式に行くって言ってたっけ」

 裸のままベッドから下り、床に散らばっている衣服を拾いながらバスルームへと向かった。目を覚まそうと熱めのシャワーを浴びる。

「ふわぁ……眠い……」

 それでも眠くて大きなあくびをしながら、シャワーを終えて部屋着に着替えた。

「もうブランチの時間になっちゃった」

 つぶやきながらダイニングに行くと、達樹が言っていた通り食事が用意されていた。クロワッサンとレーズンロールが盛られたカゴと、スクランブルエッグとウインナー、オレンジののった白い皿に、ラップのされたスープカップが並んでいる。スープは野菜とベーコンの入った具だくさんのもので、ボリュームたっぷりだ。

(私が寝坊するとわかってて、こんなに作ってくれてたんだ)

 そう思うと、愛されているんだ、という温かな気持ちが湧き上がってきた。お気に入りの歌謡曲をハミングしながら、スープを電子レンジに入れて温め、軽くトーストしたパンとともにいただく。
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