フキゲン課長の溺愛事情
 ちょうど結婚式が終わったところのようで、チャペルからホテルへと続く小道を、スーツや式服姿の参列客がぞろそろと歩いているのが見えた。

(達樹はあの中にいるのかな……?)

 庭の入口から目を凝らして見ていたが、参列客の中に彼の姿は見当たらなかった。

(どこにいっちゃったんだろ……。披露宴が始まるのにご祝儀袋がなかったら困るはずなのに……)

 璃子は思い切って披露宴会場のあるホテルの入口に向かった。〝廣瀬家・石川家披露宴〟と書かれたプレートの会場を見つけて、そちらへと近づく。会場近くのラウンジに参列客の姿があったが、そこにも達樹の姿はなかった。

(まだチャペルから戻ってないのかな?)

 璃子がチャペルに続くドアを開けたとき、話し声が聞こえてきた。

「それにしても、おまえ、元カノの結婚式によく来られたなぁ」

 男性の声が聞こえてきて、璃子はドアを押さえたまま足を止めた。

「昔の話だ」

 ぶっきらぼうにそう言ったのは達樹の声だ。
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