フキゲン課長の溺愛事情
「昔って言っても五年前だろ。しかも、相手はプロポーズしたことのある女じゃないか」
「今さらなにも感じないよ」
「本当か? それならなんでまだ彼女と住んでた部屋で暮らしてるんだよ? 彼女が戻ってきてくれるのを待ってたってことじゃないのか?」
「それはない。今は同居人がいる」

 達樹の声に、璃子はドキンとした。

(私のことだ)

「へぇ-、それは初耳だな。同居人って男?」
「女だ」
「女なのに同居人って変な言い方だな。ひとつ屋根の下だろ? 同棲とは違うのか?」
「まあ、同棲みたいなものだな」
「じゃあ、ヤることはヤってるってわけだ」

 その言葉に璃子の頬がカァッと熱くなった。けれど、次に聞こえてきた達樹の言葉に、耳を疑った。

「でも、後悔してる」

(後悔してるって……? 私と寝たことを……後悔してるってこと……? それとも私とルームシェアしていることを……?)
< 238 / 306 >

この作品をシェア

pagetop