フキゲン課長の溺愛事情

「私は啓一に友達でいてほしいって言ったのに、啓一は私が嘘をついているみたな言い方をしたじゃない。友達でもいられなくなるようなことを私に言ったのも、したのも、啓一だよ」
「璃子……」

　啓一の手が璃子の腕から滑り落ちた。

　璃子は一度深呼吸して言う。

「でも、一応同期だし、愚痴なら聞いてあげてもいい。でも、それ以外の話をするなら、私は帰る」
「ごめん……」

　啓一が肩を落とした。彼がとても小さく頼りなげに見えて、少しだけ気の毒になる。

「花嫁姿って、女性の一生で一番きれいな姿だと思うの。『海からこんなに強い風が吹くんじゃ、ドレスが乱れちゃう』っていうのは、啓一にきれいな姿を見てほしいって言う和田さんの……かわいいワガママなんじゃないの？」
「そう……かな？」

　啓一がゆっくりと顔をあげた。璃子はふいっと目を逸らした。

「知らない。とにかく痴話げんかに元カノを巻き込まないでよ。私は私で、今は気持ち的に余裕ないんだから」
「なにか……あったんだ」