フキゲン課長の溺愛事情
第十三章 後悔の意味
 璃子は啓一と別れた後、ショッピングモールをブラブラしたものの、達樹の部屋に帰りたくなくて、沙織に電話をした。彼氏と出かけようとしていた沙織だが、璃子の切羽詰まった声を訊いて、璃子のところに駆けつけてくれた。

「ごめんね、沙織」
「いいよ。どこかで飲む?」
「うん……」

 ふたりで小洒落た洋風居酒屋を探して入り、向かい合って座った。璃子が沈んだ様子なので、沙織はしばらく黙ってレモンサワーを飲んでいたが、料理が運ばれてきた後、ついに口を開いた。

「日曜日の夜に私を呼び出したわけを、そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」
「んー……」

 璃子はオレンジサワーのグラスに口をつけた。少し飲んではグラスに付いた水滴を指先でなぞる。璃子がそれを延々と繰り返しているので、沙織はシーザーサラダを取り分けながら言う。

「同居させてもらってる人となにかあったの?」
「なんでそう思うの?」
「だって、家に帰りたくないって感じだもん」
< 248 / 306 >

この作品をシェア

pagetop